茨城県稲敷市、田園地帯にぽつんと立つ道路標識がとんでもなくレア物だった |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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茨城県稲敷市、田園地帯にぽつんと立つ道路標識がとんでもなくレア物だった

世にも奇妙な道路標識 第2回

コリジョンコース現象とは

 視界を遮るものが何もない、非常に見通しのよいこの交差点で、なぜ死亡事故が多発しているのだろうか。どうやら、コリジョンコース現象というものが原因であるらしい。このタイプの事故は田園地帯で多発するため、「田園型事故」とも呼ばれる。

 直交する2本の道路に、同じタイミング、同じ速度で車がやってくると、視界の中で相手の車の位置はずっと変化しない。すると人間の知覚では相手の存在に気づかないか、止まって見えてしまうらしい。そう言われても何のことやらと思ってしまうが、経験者の話によれば、衝突直前に突然相手が出現したように感じるのだそうだ。自動車だけでなく、航空機の空中衝突やニアミスの原因となったケースも報告されている。恐ろしい話である。

 何しろドライバーは相手に気づいていないし、見通しがよいために速度を出していることも多いから、被害が大きくなりやすい。このタイプの事故によって年間400人が亡くなっているというから、コリジョンコース現象はもっと広く周知されてよい事柄だろう。

 というわけで、この交差点の「優先道路」標識は、不慮の衝突事故を防ぐための、対策の一環として立てられたものと見てよさそうだ。ただ筆者にとってちょっと不思議だったのは、このエリアには他にも似たような十字路がたくさんあるのに、事故対策がなされているのはこの交差点だけだったことだ。直交する道路の存在がわかりにくいためかとも思ったが、他の交差点もあまり事情は変わりないようであった。もしかするとこの交差点にだけ、何か別の要因があるのかもしれない。

レア標識は一期一会

 筆者の住む茨城県内には、もうひとつ土浦市に優先道路標識があったということだが、残念ながら数年前に撤去されてしまったようだ。これに限らず、レア標識は「面倒だからあとで撮影しよう」などと思っていると、いつの間にかなくなっていることも少なくない。レア標識は一期一会なのである。

 と、さんざんレアだ特殊だと言っておいて何なのであるが、実はこの標識がたくさん設置されている地域もある。筆者が知っているのは石川県金沢市付近で、国道8号金沢バイパス沿いにかなりの数が存在している。他の幹線道路と比べて特別な事情がありそうにも見えないが、何か理由があるのだろうか。もし他に「優先道路」多発地帯を見かけたら、筆者にご一報いただければ幸いである。

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佐藤 健太郎

さとう けんたろう

1970年兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。大手医薬品メーカーの研究職を経て、サイエンスライターとして独立。文系の読者にもわかりやすい解説で定評があり、東京大学大学院理学系研究科の広報担当特任助教として東大の研究実績を対外発信する業務も担当した。『医薬品クライシス』(新潮新書)で2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞を受賞。著書はほかに、『「ゼロリスク社会」の罠』『化学で「透明人間」になれますか?』(ともに光文社新書)、『炭素文明論』(新潮新書)、『ふしぎな国道』『世界史を変えた薬』(ともに講談社現代新書)などがある。


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